みち ~道~ 第166回
『みち』 目次
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『みち』 ~道~ 第166回
「あ、更紗さん。 珍しく早いじゃないですか」 そして更紗の後ろに立っている正道にお辞儀をし
「正道さん、お疲れになっていませんか?」
「いや、いや 何ともないですよ。 ご心配なく」 そして野瀬と一緒に立ち上がった琴音を見て
「琴音さん、今日は無理を言ってすみませんでしたなぁ」 そう言って深くお辞儀をした。
「いえ、とんでもないです」 慌てて琴音も深く頭を垂れた。
「挨拶はこのくらいにして正道さん座りませんこと?」 更紗が正道に促すと
「そうですな。 立ってても話が出来ませんな」 4人が椅子に腰掛けた。 更紗の前には野瀬、隣には琴音が座っている。
「あら? どうしたの? 野瀬君、顔色がいいじゃない」
「え? そうですか?」
「そうよ、ここ3,4日ずっと顔色が悪かったのにすごくいい顔色よ」
「きっと織倉さんパワーですね」
「そんなことないです。 さっきステーキを食べたからじゃないですか?」
「え?何? ステーキって?」
「今まで野瀬さんにランチをご馳走になってたんです」
「ははーん、それで野瀬君の顔色が良くなったってことね。 やっぱり琴音さんパワーね」
「久しぶりに楽しいランチでした」 満足気に答える野瀬であった。
「それじゃあ顔色も良くなるわけよね。 抜け駆けってヤツよね」 横目で野瀬を見た。
「イヤだなぁー、人聞きの悪い言い方しないで下さいよ」
「ま、そのことはいいとして」 隣に座る琴音のほうに向きをかえ
「琴音さん、どうしても正道さんがご自分の口から琴音さんにお願いしたいって仰るの。 お話だけでも聞いてもらえないかしら?」
「お話だけなら・・・でも以前にも言ったようにいいお返事はできないと思うんです」 申し訳なさそうに琴音が言うと正道が
「いや、いや お話だけでも聞いてくださると仰っていただいて嬉しいですよ」
「すみません」 琴音がそう言うと
「お謝りになんてならないで下さい。 話しにくくなります」
「あ・・・すみません」 口を押さえてもう一度謝った。
「もう、琴音さんったら。 また謝ってる」 そんな琴音を愛おしそうに見る更紗だ。
「私ったら下手に喋っちゃいけませんね。 どうぞ正道さんお話してください。 ちゃんと聞いてます」 正道の目をまっすぐに見た。 肝が据わったようだ。
「おお、良い目をしてらっしゃる。 それでは・・・」 そう言って少し座りなおし話を続けた。
「もう更紗さんから聞いていらっしゃるとは思いますから話が重なりますが、私は今まで京都で人にヒーリングをしてきました。 決してそれが嫌になったわけじゃないんです。 ヒーリングに来てくださる方が飼っているペットのことをよく話されるんですね」
「ペットですか?」 思わず琴音が言った。
「そうです。 動物というものは意思疎通を図るのがとても難しい。 たまにペットの様子を見てアレコレ分かられる方もいらっしゃるようですが殆どの方がそうではありません」
「言葉が通じませんもんね」 考え込むように琴音が言った。
「そうなんです。 何処が痛いのか、何が悲しいのか、何を訴えているのか その思いが深くなればなるほど人に理解することが困難になってくるんです」 琴音が大きく頷いた。
「そんな悩みを抱えてお話をされる方を見ていると私も何かの形でお力になれないかと思い始めましてな。 それで考えたのが 私には有難くも弟子がおりますから人様のことは弟子に任せて 私がペットというか、動物の方を見ていこうかと思ったのが始まりなんです。
泣きながら話される方もいらっしゃるんですよ。
先日も今までとても温厚だった飼い犬がある日を境に急に凶暴になったらしいんです。 思い当たる節は無いそうなんですが、可哀想だけどずっとケージに入れられているそうなんです。 散歩にも勿論連れて行けず、糞尿もまともに取らせてくれない。 今までずっと家の中で一緒に生活をしてとても可愛がっておられただけにその方はとても心を痛めておられて・・・。 その方にヒーリングをしてさしあげても原因は飼い犬との関係にありますから 何度ヒーリングをしても元の木阿弥なんです。
ペットが交通事故にあったり、病気になったり、犬や猫として不自由な生活になりそれを悲しんでおられる方も多く居られます。 その方たちのお力になりたいのです。 そして動物達にも少しでも良くなって欲しいのです。 その手助けを琴音さんにお願いしたいのです。 どうか私と一緒にやっていって貰えるよう考えては頂けませんでしょうか?」 ずっと琴音を見ていた目を閉じ頭を下げた。
「あ、正道さん頭を上げてください」 慌てた琴音は思わず席を立ってしまった。 そして頭を上げた正道を見て椅子に座りなおし
「正道さんの仰ることはとてもよく分かります。 ですが私にはその様なお手伝いは出来ませんし 何より今勤めている会社があります。 まだ入って2年です。 今まで皆さんにご迷惑をかけながら仕事をしてきてやっと慣れてきたところなんです。 何のご恩返しも出来ないまま辞めるなんてことは出来ませんし、それに2年前この年齢の私を雇ってくださった会社にも感謝しているので・・・」 断るという事を本人に、ましてやその場でなどという事は今までの琴音では考えられないことである。
だが、正道の空気がそうさせるのか心の思いを話す事が出来た。
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「あ、更紗さん。 珍しく早いじゃないですか」 そして更紗の後ろに立っている正道にお辞儀をし
「正道さん、お疲れになっていませんか?」
「いや、いや 何ともないですよ。 ご心配なく」 そして野瀬と一緒に立ち上がった琴音を見て
「琴音さん、今日は無理を言ってすみませんでしたなぁ」 そう言って深くお辞儀をした。
「いえ、とんでもないです」 慌てて琴音も深く頭を垂れた。
「挨拶はこのくらいにして正道さん座りませんこと?」 更紗が正道に促すと
「そうですな。 立ってても話が出来ませんな」 4人が椅子に腰掛けた。 更紗の前には野瀬、隣には琴音が座っている。
「あら? どうしたの? 野瀬君、顔色がいいじゃない」
「え? そうですか?」
「そうよ、ここ3,4日ずっと顔色が悪かったのにすごくいい顔色よ」
「きっと織倉さんパワーですね」
「そんなことないです。 さっきステーキを食べたからじゃないですか?」
「え?何? ステーキって?」
「今まで野瀬さんにランチをご馳走になってたんです」
「ははーん、それで野瀬君の顔色が良くなったってことね。 やっぱり琴音さんパワーね」
「久しぶりに楽しいランチでした」 満足気に答える野瀬であった。
「それじゃあ顔色も良くなるわけよね。 抜け駆けってヤツよね」 横目で野瀬を見た。
「イヤだなぁー、人聞きの悪い言い方しないで下さいよ」
「ま、そのことはいいとして」 隣に座る琴音のほうに向きをかえ
「琴音さん、どうしても正道さんがご自分の口から琴音さんにお願いしたいって仰るの。 お話だけでも聞いてもらえないかしら?」
「お話だけなら・・・でも以前にも言ったようにいいお返事はできないと思うんです」 申し訳なさそうに琴音が言うと正道が
「いや、いや お話だけでも聞いてくださると仰っていただいて嬉しいですよ」
「すみません」 琴音がそう言うと
「お謝りになんてならないで下さい。 話しにくくなります」
「あ・・・すみません」 口を押さえてもう一度謝った。
「もう、琴音さんったら。 また謝ってる」 そんな琴音を愛おしそうに見る更紗だ。
「私ったら下手に喋っちゃいけませんね。 どうぞ正道さんお話してください。 ちゃんと聞いてます」 正道の目をまっすぐに見た。 肝が据わったようだ。
「おお、良い目をしてらっしゃる。 それでは・・・」 そう言って少し座りなおし話を続けた。
「もう更紗さんから聞いていらっしゃるとは思いますから話が重なりますが、私は今まで京都で人にヒーリングをしてきました。 決してそれが嫌になったわけじゃないんです。 ヒーリングに来てくださる方が飼っているペットのことをよく話されるんですね」
「ペットですか?」 思わず琴音が言った。
「そうです。 動物というものは意思疎通を図るのがとても難しい。 たまにペットの様子を見てアレコレ分かられる方もいらっしゃるようですが殆どの方がそうではありません」
「言葉が通じませんもんね」 考え込むように琴音が言った。
「そうなんです。 何処が痛いのか、何が悲しいのか、何を訴えているのか その思いが深くなればなるほど人に理解することが困難になってくるんです」 琴音が大きく頷いた。
「そんな悩みを抱えてお話をされる方を見ていると私も何かの形でお力になれないかと思い始めましてな。 それで考えたのが 私には有難くも弟子がおりますから人様のことは弟子に任せて 私がペットというか、動物の方を見ていこうかと思ったのが始まりなんです。
泣きながら話される方もいらっしゃるんですよ。
先日も今までとても温厚だった飼い犬がある日を境に急に凶暴になったらしいんです。 思い当たる節は無いそうなんですが、可哀想だけどずっとケージに入れられているそうなんです。 散歩にも勿論連れて行けず、糞尿もまともに取らせてくれない。 今までずっと家の中で一緒に生活をしてとても可愛がっておられただけにその方はとても心を痛めておられて・・・。 その方にヒーリングをしてさしあげても原因は飼い犬との関係にありますから 何度ヒーリングをしても元の木阿弥なんです。
ペットが交通事故にあったり、病気になったり、犬や猫として不自由な生活になりそれを悲しんでおられる方も多く居られます。 その方たちのお力になりたいのです。 そして動物達にも少しでも良くなって欲しいのです。 その手助けを琴音さんにお願いしたいのです。 どうか私と一緒にやっていって貰えるよう考えては頂けませんでしょうか?」 ずっと琴音を見ていた目を閉じ頭を下げた。
「あ、正道さん頭を上げてください」 慌てた琴音は思わず席を立ってしまった。 そして頭を上げた正道を見て椅子に座りなおし
「正道さんの仰ることはとてもよく分かります。 ですが私にはその様なお手伝いは出来ませんし 何より今勤めている会社があります。 まだ入って2年です。 今まで皆さんにご迷惑をかけながら仕事をしてきてやっと慣れてきたところなんです。 何のご恩返しも出来ないまま辞めるなんてことは出来ませんし、それに2年前この年齢の私を雇ってくださった会社にも感謝しているので・・・」 断るという事を本人に、ましてやその場でなどという事は今までの琴音では考えられないことである。
だが、正道の空気がそうさせるのか心の思いを話す事が出来た。