みち ~未知~ 第78回
『みち』 目次
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『みち』 第51回からは以下からになります。
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第61回・第62回・第63回・第64回・第65回・第66回・第67回・第68回・第69回・第70回
『みち』 ~未知~ 第78回
座椅子にキチンと座りなおすと
「身体がだるいも何も、もうどうでも良くなってきちゃった・・・コーヒーでも飲もう・・・」 コーヒーを入れにキッチンに立った。
テーブルを見ると会社の帰りに買ってきたサンドイッチと菓子パンがある。
「パンを見ちゃうとお腹が空いてきちゃうわ」 コーヒーとサンドイッチを持って和室の机に置き、カーテンを開けるといい天気だ。
「わぁ、いいお天気」 空を見ていると玄関で新聞の入った音がした。 玄関まで取りにいき新聞を片手にサンドイッチを食べ始めた。
「面白そうな番組はないわねぇ。 ダラダラ過ごすと今日は一日退屈な日になるのかしら」 そして今度はとっておいた旅行会社の滝の広告を見た。
「やっぱり行こうかしら。 山の中で森林浴もいいし滝でマイナスイオンを浴びるのもいいわよね」 じっと広告を見る。
「・・・おかしいわ・・・どうしてなのかしら・・・」 そこじゃないからだよ。
何度広告を見てもそこへ行きたい気になれない。
「・・・ここじゃないわ。 ・・・あっちよ!」 やっと気付いたみたいだね。
腰をあげたと思ったら
「あっと、その前に滝で思いっきり遊びたいからお腹が空いても困るわよね。 菓子パンも食べていきましょう」 コーヒーカップを手に持ちキッチンで菓子パンを食べ始めた。
ああ、そんなに食べちゃあ・・・。
コーヒーにサンドイッチ、菓子パンを食べて出かける準備を始めた。
家を出てバス停へ向かうと 朝早くにも関わらず両手を杖の上に置いた老人が先にバス停のベンチに座っていた。
「おはようございます」 軽く会釈をしてベンチの横に立った。
「おはようさん。 朝は涼しおすなぁ。 こんな早ようからお出掛けどすか?」 関西の人間のようだ。
「はい。 京都の方へ」
「京都どすか。 お盆やさかいになぁ。 ご実家か親戚さんのおうちどすか? わたし、京都の嵐山の出身ですんや」
「そうなんですか。 残念ながら京都に親戚がいるわけじゃないんです。 愛宕山の方にある滝に行こうと思いまして」
「愛宕山の方?・・・はぁ、はぁ、愛宕山の空也(くうや)滝どすか」
(空也滝って言うのね) 滝の名前も覚えていなかったようだ。 ここも琴音のアバウトさだが、今またもう一つ琴音のアバウトさが出た。 老人の言葉をキチンと聞かなかったようだ。 老人は『愛宕山の空也滝』 と言ったのだ。
「その滝ご存知ですか? まだ一度も行った事がないんですけどいい所ですか?」
「あそこはよろしおす。 行くに値する人には・・・」 優しかった目が前を見据えて厳しくなったが
「あ、すんませんな。 ええとこどすえ」 元の老人の表情に戻った。
「そうですか。 良かった」
「愛宕山もよろしおすけど、嵐山には行ったことはあらしまへんのか?」
「はい、一度もありません」
「そうどすか。 せやけど、どうせ行かはるんやったらいっぺんぐらい嵐山にも行かはったらどうどすか?」
「あ、そう言えば 京都駅から清滝に向かうバスに乗ったときに嵐山を通りますよね」
「そうどすなぁ、そこでいっぺん降りはってもよろしおすけど・・・そやなぁ、阪急乗る言うても、ややこしおすしなぁ・・・帰りにでも途中で降りはって渡月橋(とげつきょう)・・・ほう、今やったらきっとみんな足漬けて桂川を渡ってますわ。 行きか帰りか、どっちかを嵐山で降りはって裸足で桂川を渡らはったらどうどすか? 暑い時は気持ちよろしおすえ」
「夏の暑い時に素足で川・・・素敵! そうですね。 やってみようかしら」
「はいな。 あ、堪忍やで。 お若いんやから嵐山の賑やかな方がよろしおすなぁ。 渡月橋の向こうは静かでちょっとのお茶屋があるだけどすさかいに お若い人が好むようなもんはなんもあらへんなぁ」 朝が早い。 バスのエンジンの音が聞こえる。
「静かなほうが好きですから。 賑やかな方は沢山お土産物屋さんがあるんですか?」
「ようさんありますで。 神社もありますし・・・せやけどそっちの方は今は人だかりで動くんも大変なんと違うかいなぁ。 あらま、行け言うたり行くな言うたりややこしい事言いましたな」
「そんなことないです。 参考になりました」 バスが停留所に着いた。
「バスが来ましたな。 ほな、行ってらっしゃい」 老人はベンチに座ったままだ。
「乗らないんですか?」
「散歩の途中どすんや」
「あ、休憩されてたんですね。 お話を聞かせていただいて有難うございました。 じゃあ、行ってきます」 一人バスに乗り込んだ琴音。
「早すぎるくらい早いんだから 寄り道してもいいかもね」 バスの中も琴音一人だ。
琴音気付いてるかい? 今日もバスの時刻表を見てこなかっただろう? それなのにナイスタイミングでのバスだっただろう? それに老人に教えてもらった事、忘れるんじゃないよ。 必ず実行するんだよ。
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座椅子にキチンと座りなおすと
「身体がだるいも何も、もうどうでも良くなってきちゃった・・・コーヒーでも飲もう・・・」 コーヒーを入れにキッチンに立った。
テーブルを見ると会社の帰りに買ってきたサンドイッチと菓子パンがある。
「パンを見ちゃうとお腹が空いてきちゃうわ」 コーヒーとサンドイッチを持って和室の机に置き、カーテンを開けるといい天気だ。
「わぁ、いいお天気」 空を見ていると玄関で新聞の入った音がした。 玄関まで取りにいき新聞を片手にサンドイッチを食べ始めた。
「面白そうな番組はないわねぇ。 ダラダラ過ごすと今日は一日退屈な日になるのかしら」 そして今度はとっておいた旅行会社の滝の広告を見た。
「やっぱり行こうかしら。 山の中で森林浴もいいし滝でマイナスイオンを浴びるのもいいわよね」 じっと広告を見る。
「・・・おかしいわ・・・どうしてなのかしら・・・」 そこじゃないからだよ。
何度広告を見てもそこへ行きたい気になれない。
「・・・ここじゃないわ。 ・・・あっちよ!」 やっと気付いたみたいだね。
腰をあげたと思ったら
「あっと、その前に滝で思いっきり遊びたいからお腹が空いても困るわよね。 菓子パンも食べていきましょう」 コーヒーカップを手に持ちキッチンで菓子パンを食べ始めた。
ああ、そんなに食べちゃあ・・・。
コーヒーにサンドイッチ、菓子パンを食べて出かける準備を始めた。
家を出てバス停へ向かうと 朝早くにも関わらず両手を杖の上に置いた老人が先にバス停のベンチに座っていた。
「おはようございます」 軽く会釈をしてベンチの横に立った。
「おはようさん。 朝は涼しおすなぁ。 こんな早ようからお出掛けどすか?」 関西の人間のようだ。
「はい。 京都の方へ」
「京都どすか。 お盆やさかいになぁ。 ご実家か親戚さんのおうちどすか? わたし、京都の嵐山の出身ですんや」
「そうなんですか。 残念ながら京都に親戚がいるわけじゃないんです。 愛宕山の方にある滝に行こうと思いまして」
「愛宕山の方?・・・はぁ、はぁ、愛宕山の空也(くうや)滝どすか」
(空也滝って言うのね) 滝の名前も覚えていなかったようだ。 ここも琴音のアバウトさだが、今またもう一つ琴音のアバウトさが出た。 老人の言葉をキチンと聞かなかったようだ。 老人は『愛宕山の空也滝』 と言ったのだ。
「その滝ご存知ですか? まだ一度も行った事がないんですけどいい所ですか?」
「あそこはよろしおす。 行くに値する人には・・・」 優しかった目が前を見据えて厳しくなったが
「あ、すんませんな。 ええとこどすえ」 元の老人の表情に戻った。
「そうですか。 良かった」
「愛宕山もよろしおすけど、嵐山には行ったことはあらしまへんのか?」
「はい、一度もありません」
「そうどすか。 せやけど、どうせ行かはるんやったらいっぺんぐらい嵐山にも行かはったらどうどすか?」
「あ、そう言えば 京都駅から清滝に向かうバスに乗ったときに嵐山を通りますよね」
「そうどすなぁ、そこでいっぺん降りはってもよろしおすけど・・・そやなぁ、阪急乗る言うても、ややこしおすしなぁ・・・帰りにでも途中で降りはって渡月橋(とげつきょう)・・・ほう、今やったらきっとみんな足漬けて桂川を渡ってますわ。 行きか帰りか、どっちかを嵐山で降りはって裸足で桂川を渡らはったらどうどすか? 暑い時は気持ちよろしおすえ」
「夏の暑い時に素足で川・・・素敵! そうですね。 やってみようかしら」
「はいな。 あ、堪忍やで。 お若いんやから嵐山の賑やかな方がよろしおすなぁ。 渡月橋の向こうは静かでちょっとのお茶屋があるだけどすさかいに お若い人が好むようなもんはなんもあらへんなぁ」 朝が早い。 バスのエンジンの音が聞こえる。
「静かなほうが好きですから。 賑やかな方は沢山お土産物屋さんがあるんですか?」
「ようさんありますで。 神社もありますし・・・せやけどそっちの方は今は人だかりで動くんも大変なんと違うかいなぁ。 あらま、行け言うたり行くな言うたりややこしい事言いましたな」
「そんなことないです。 参考になりました」 バスが停留所に着いた。
「バスが来ましたな。 ほな、行ってらっしゃい」 老人はベンチに座ったままだ。
「乗らないんですか?」
「散歩の途中どすんや」
「あ、休憩されてたんですね。 お話を聞かせていただいて有難うございました。 じゃあ、行ってきます」 一人バスに乗り込んだ琴音。
「早すぎるくらい早いんだから 寄り道してもいいかもね」 バスの中も琴音一人だ。
琴音気付いてるかい? 今日もバスの時刻表を見てこなかっただろう? それなのにナイスタイミングでのバスだっただろう? それに老人に教えてもらった事、忘れるんじゃないよ。 必ず実行するんだよ。