僕と僕の母様 第48回

大福りす
僕と僕の母様 第48回



それを見ていた他のメンバーが 言いなりになっている僕を見て 最初はクスクスと笑って見ていたけど その内に一人また一人と 僕達に合わせてついてきてくれる。

何か吹奏楽みたいになってきた。 イヤ、しっかり吹奏楽部なんだけど。

割と長い間吹いていたような気がする。 実際はそんなに吹いていないのだろうけど 僕にとっては十時間くらい ずっと吹き続けているような気がした。

もう眼界だ、あまりの緊張で 音がヘロヘロしてきだした。

ああ、でもみんなが僕に合わせてくれてるんだから 最後までやり遂げなくっちゃ、頑張らなくっちゃ と思いながらも でも出来ることなら その前に誰かヘマをしてくれ、それか「ここまで」 といってくれ、目は楽譜を追っているけど 心の中ではそんな事ばかりを叫んでいた。

しかし神様は そんなズルい事を考えている僕を 許してはくれなかったようだ。

僕の愛するサックス君が ピヒャーっと叫び声を上げた。

するとバラバラとみんなの音が止んでいく。

誰がヘマをしたわけではない 自分がヘマをしてしまった。 人のせいにしようと思った罰だ。

でもこれでやっと 究極の緊張から解き放たれた。

そのとたん半分ホッとしたのと 半分せっかくみんなノッてきてたのに 悪いことをしてしまったという 申し訳のない気持ちになった。

すると先輩達が「良く吹けたねー」 「やるじゃん」 などと口々に褒めてくれた。

ズルい事を考えていた僕は 素直に喜べないし 実際曲を止めてしまったのは僕だ。

「ごめんなさい 曲、止めちゃいました」 ズルい事を考えていたことは 告白できない。

「何言ってるの十分だよ」 クラリネット先輩が言ってくれた。

「・・・はい」 心が痛い。

「ね、十分合わせられたでしょ」 同級生フルートが言う。

「うん」

「何でもやってみなくちゃ分からないし 言ってみれば団体競技なんだから みんなの力を借りればいいのよ。 分かった?」

「うん」

「陵也君は 毎日基礎からきちんと練習して曲に入ってるんだから 十分なんだよ。 分かった?」 褒められているのだろうか、お説教を受けているのだろうか まるで母様と話しているようだ。

「うん」 だんだん痛みが薄れてきた。 僕って意外と心の薄い人間なのかな。

「じゃあ、今日をきっかけに 全員で合わせの練習もしていこうか」 部長が言う。

「そうね、ちょっとペース上げていかなくっちゃね」 先輩達が言う。

明日からこの究極の緊張を 毎日味わうのかと思うと 無断欠席したくなる。 やっぱり僕は弱い人間です。

次の日から早速先生を呼んでの 合わせの練習が始まった。

無断欠席をする勇気もなかった弱い人間の僕は しっかり部室にいる。





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