--- 映ゆ --- 第50回
『---映ゆ---』 目次
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翌日
ジャンムが走ってタム婆の小屋へやって来た。 小屋の前まで来ると息を切らせながら大きな声で叫んだ。
「シノハさん居ますか!?」 小屋の中にいたシノハがすぐに中から出てきた。
「どうした?」
「タイリンが! タイリンがやられる!」 ジャンムの慌てよう、その言葉にただならぬものを感じた。
「どこだ!」
「みんなの集まるところ!」 聞くとすぐに走り出した。 その後をジャンムが追う。
遠めに数人の男たち、その遠回りに居る男たちと女たちが見えた。 その女たちが何か言っているようだ。
(いったいどうしたって言うんだ!)
今日は村に行かず、全員身体を休めていると聞いていたところだった。 それなのに。
シノハの走ってくる足音に一人の女が振向いた。
「シノハさん・・・」 その声に女たちが振向くとシノハに場所を譲る。
シノハの目に口の端から血を流して、座り込んでいるタイリンが映ると「タイリン!」 と大声で呼び、すぐに横にしゃがみ込んだ。
「これは、これは。 タイリンの守り精霊か?」 30の歳を過ぎたくらいであろう細い男。
「何だよ! その言い方は!」 女が言う。
その女に合わせて他の女たちからも声が飛ぶ。
「タイリン、大丈夫か?」
「はい。 ちょっと口を切っただけです」
「口を切っただけって・・・」
「おい、何をゴソゴソ言ってんだ。 どけよ」
「客人にその言い方は何だよ!」 違う女が言う。
女たちがざわめいて口々に同じ様な事を言っている。
「客人? ただの使いだろう。 トワハの代わりの。 使いがいつまでこの村に居てんだ」
女が言い返そうとしたとき、シノハが立ち上がり男に向き合った。
一瞬にして女達の口が止む。
「いい大人が、歳浅い者を殴ったのか?」
「はぁ? 村の者でないヤツが口をはさむんじゃないよ」
「確かに我はこの村の者ではない。 だが、タイリンを傷つける事は許さない」
「はぁ? タイリンはこの村の者だ。 お前には関係ない」 にじり寄る。
「タイリンを傷つけるな。 今もこれからも」
言った途端、右拳がシノハの顔めがけて打ち込まれた。 すぐさま、屈んで避けたところに、左拳が腹をめがけてとんできた。 それを両掌で軽く受け止めると、その拳を少し横に流させると同時に、己の身体を反対に流して手を引く。 相手の左拳がシノハの腹を捕らえることなく空に伸びた。
『馬を扱う村』 であり、陰では『武人の村』 としてあるゴンドュー村で鍛えられた武術、それを簡単に出すことは出来ない。 陰の『武人の村』 は表立っての『武人の村』 よりも恐ろしく腕が立つ。
今は戦いの時ではないし、ゴンドュー村から戦っていいと許しを得ているわけでもない。
それに、このトンデン村の人間ではないのだ。 よそ者が、よその村の中で暴れるわけにはいかない。
手は出せない。 避けるしかない。
(軽いな) 受けた拳に重みがない。
「ふん、逃げるだけか?」 嘲るように言う。
「争う気はない」
「ヘナチョコが戦えないって言うのか?」
「ファブア! いい加減にしな!」 女が言う。
(こいつがファブアか。 タイリンに拳固をくらわせたっていう)
「タイリンは間違った事をしない。 誰にも手を出されなければならないような事はしない」 言い切った。
(シノハさん・・・) タイリンが驚いたようにシノハを見た。
なんの経緯(いきさつ)を聞いたわけではないのに、言い切るその後ろ姿にシノハからの信用を大きく感じた。 それが嬉しかった。
「戦いも出来ないヤツが大きな事を言うんじゃないよ!」
「戦い? 争う気もなければ戦う気もない」
「お前、ドンダダの邪魔をしただろう」 先ほどまでと違って声を低めて言う。
(聞かれたくない話か) 思うと表情を変えず、すぐに答えた。
「何のことだ」
「しらばっくれるんじゃないよ!」
また右拳が飛んできた。 それを軽くかわす。 次に足が飛んできた。 簡単にかわす。
(低い) 振り上げられた足の高さがない。 柔軟性を感じない。
(こいつ・・・下手か?)
ファブアは次から次へと、拳と足をシノハに繰り出すが、ことごとく避けられる。
その時、トデナミと共にタム婆がやって来た。
「ファブア! 何をしておる!」 ジャンムの声を聞いて、小屋に居たタム婆とトデナミもやってきたのだ。
ファブアはシノハを伸(の)そうと躍起になっていてタム婆の声に気付かない。
「ファブア! 婆様だ!」 ファブアの仲間かその上のドンダダの仲間かが、ファブアの手を止めた。
「え? ば・・・婆様・・・?」 息を切らせたファブアがタム婆を見た。
「何をしておる」 タム婆がもう一度言葉を重ねた。
「あ・・・その・・・よそ者のクセにコイツが生意気だったんで・・・」 息も上がらず平然な顔で立っているシノハを見た。
シノハは誰にも咎められる事はしない、言わない。 と言いたかったが、それは言えない。 まず第一に村の者を立てなければいけない。
「何をしておると聞いておるんじゃ」
「あの・・・それは・・・」
「今日は身体を休める日じゃ。 要らぬ事をするな!」
「・・・はい」
「じゃが、これだけ多くの者が見ておったんじゃ。 村々の掟は知っておるな?」
「はい」
他所の村の者に対して先に手を出した方が、出された側から改めて勝負を申し入れする事が出来る。 最初の勝負がどうであれ、その時の勝ち負けは関係ない。 出された側が勝負を申し入れたその勝負での勝ち負けが結果となる。 今は拳であったが、己の得意とする勝負にすることが出来る。 剣が得意なら勝負を剣に変えてもいい。
「シノハも知っておるな」
「はい」
「どうする?」
「申し入れは致しません」 チッ、といった顔でファブアがシノハを見た。
「そうか。 ならばこれまでじゃ。 みな今日は身体を休めろ」
言われファブアはまだ少し息を荒げながら、仲間を連れてこの場を後にした。 その仲間の一人が口の端に不気味な笑みを浮かべた。
(ここらで・・・) ファブアとシノハの戦いを見て、ファブアは自分より随分と弱いと確信した。
(あとは・・・) ファブアの後姿を見ながら顎に手をやった。
その場に残った男たち、見守っていた女たちは怒(いか)らせていた肩を落とした。
「婆様・・・」 シノハがタム婆を見た。
「どういう事じゃ?」
「分かりません。 ですが、タイリンが殴られたみたいです」
タム婆がタイリンを見ると、シノハがすぐに座り込んでいるタイリンの元に戻りしゃがんだ。
「タイリン、痛くないか?」 シノハとタイリンの姿を見たタム婆が、声を大きく皆へ問いかけた。
「誰か、説明しろ!」 言われ、一人の女が口を切った。
「アタシらと、この男たちとで話をしてたんです。 そしたらファブアたちが急にやってきて、タイリンを殴ったんです。 生意気なんだよって」
「あの時、ジャンムの父さんに加勢した事を、きっと今でも根に持っているんです」
「それに、すれ違いざま何もしていないトマムの頭を叩いたから、それを見ていたタイリンがトマムを庇ったのも気に食わないんだと思います」 女たちが順々に言う。
タイリンがジャンムの父親に加勢した事は以前、シノハが大声を出した時にトデナミから聞いて知っていた。
「男たち」 タム婆が小さくなっている男たちを見た。
「お前達はいったい何をしておったんじゃ」 男たちがキョロキョロと互いに目を合わせる。
「歳浅いタイリンがやられているのを、指をくわえてみておったのか!」 男たちが下を向いた。
「なんとか言え!」
「婆様、この男たちではファブアに逆らえません。 ファブアに逆らうとドンダダに何をされるか分かりませんから」 女が冷たい視線を男たちに送る。
「ああ、情けないったらありゃしないよ」 違う女が吐き捨てるように言って男たちを見た。
「お前たちはそんなにドンダダが恐いのか。 自分達で何とかしようと思わんのか!」
「お・・・俺たちだって・・・何とかしたいと・・・思ってます。 ・・・でも」 次の言葉が大切だというのに黙ってしまった。
「男ならシャンと喋れ!」
だが、頭を垂れて完全に黙ってしまった。
「婆様、あまり大きな声を出されては、せっかくお元気になられたお身体に触ります。 今日のところはここまでではいかがでしょうか」 トデナミがタム婆の身体を案じて言う。
「・・・ああ、そうじゃな」 いわれて力を抜くと、たしかに身体がきつくなってきていた。
「お前たちも身体を休めておけ。 女たちもまだ用をする時ではないじゃろう、小屋で休んでおけ」 言われた全員がゆっくりと動き出したが、小屋に向う気はないようだ。
タム婆が歩き出すのを見ると、トデナミが離れているタイリンを少し大きな声で呼んだ。
「タイリン、あとで薬草小屋へ来なさいね」
「これくらい何ともありません」
「駄目よ。 必ず来るのよ」
タイリンがシノハを見て、どうしようという目をしている。
「多分、色々声をかけたいんだろう。 行くといい」 タイリンが仕方なく頷いた。
座り込んでいるタイリンの横にしゃがんでいたシノハが膝を立てて座った。
「な、さっきの女たちの話だと・・・。 どういえば言いのかなぁ・・・」 頭をかいて首を傾げる。 その様子にタイリンも首を傾げる。
ジャンムが走りよってきてタイリンの横に一緒に座り込んだ。 そのジャンムを見て一旦、タイリンへの言葉を切った。
「ジャンム、知らせてくれて有難う」 えへへ、と恥ずかしそうに頭を掻いた。
視線をタイリンに戻すと話を続けた。
「はっきりと聞いていいか?」
「はい」 タイリンもジャンムも何のことかとシノハを見る。
「さっきの女たちの話だと、タイリンがファブアに楯突いたから殴られたみたいだけど、そうなのか?」
「はい」
「楯突いた事を後悔してないか?」
もし、少しでも迷いがあるようだったら、その切っ掛けを作ったのは己だ。 責任の取り方を考えなくてはならない。
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- 映ゆ - ~Shinoha~ 第50回
翌日
ジャンムが走ってタム婆の小屋へやって来た。 小屋の前まで来ると息を切らせながら大きな声で叫んだ。
「シノハさん居ますか!?」 小屋の中にいたシノハがすぐに中から出てきた。
「どうした?」
「タイリンが! タイリンがやられる!」 ジャンムの慌てよう、その言葉にただならぬものを感じた。
「どこだ!」
「みんなの集まるところ!」 聞くとすぐに走り出した。 その後をジャンムが追う。
遠めに数人の男たち、その遠回りに居る男たちと女たちが見えた。 その女たちが何か言っているようだ。
(いったいどうしたって言うんだ!)
今日は村に行かず、全員身体を休めていると聞いていたところだった。 それなのに。
シノハの走ってくる足音に一人の女が振向いた。
「シノハさん・・・」 その声に女たちが振向くとシノハに場所を譲る。
シノハの目に口の端から血を流して、座り込んでいるタイリンが映ると「タイリン!」 と大声で呼び、すぐに横にしゃがみ込んだ。
「これは、これは。 タイリンの守り精霊か?」 30の歳を過ぎたくらいであろう細い男。
「何だよ! その言い方は!」 女が言う。
その女に合わせて他の女たちからも声が飛ぶ。
「タイリン、大丈夫か?」
「はい。 ちょっと口を切っただけです」
「口を切っただけって・・・」
「おい、何をゴソゴソ言ってんだ。 どけよ」
「客人にその言い方は何だよ!」 違う女が言う。
女たちがざわめいて口々に同じ様な事を言っている。
「客人? ただの使いだろう。 トワハの代わりの。 使いがいつまでこの村に居てんだ」
女が言い返そうとしたとき、シノハが立ち上がり男に向き合った。
一瞬にして女達の口が止む。
「いい大人が、歳浅い者を殴ったのか?」
「はぁ? 村の者でないヤツが口をはさむんじゃないよ」
「確かに我はこの村の者ではない。 だが、タイリンを傷つける事は許さない」
「はぁ? タイリンはこの村の者だ。 お前には関係ない」 にじり寄る。
「タイリンを傷つけるな。 今もこれからも」
言った途端、右拳がシノハの顔めがけて打ち込まれた。 すぐさま、屈んで避けたところに、左拳が腹をめがけてとんできた。 それを両掌で軽く受け止めると、その拳を少し横に流させると同時に、己の身体を反対に流して手を引く。 相手の左拳がシノハの腹を捕らえることなく空に伸びた。
『馬を扱う村』 であり、陰では『武人の村』 としてあるゴンドュー村で鍛えられた武術、それを簡単に出すことは出来ない。 陰の『武人の村』 は表立っての『武人の村』 よりも恐ろしく腕が立つ。
今は戦いの時ではないし、ゴンドュー村から戦っていいと許しを得ているわけでもない。
それに、このトンデン村の人間ではないのだ。 よそ者が、よその村の中で暴れるわけにはいかない。
手は出せない。 避けるしかない。
(軽いな) 受けた拳に重みがない。
「ふん、逃げるだけか?」 嘲るように言う。
「争う気はない」
「ヘナチョコが戦えないって言うのか?」
「ファブア! いい加減にしな!」 女が言う。
(こいつがファブアか。 タイリンに拳固をくらわせたっていう)
「タイリンは間違った事をしない。 誰にも手を出されなければならないような事はしない」 言い切った。
(シノハさん・・・) タイリンが驚いたようにシノハを見た。
なんの経緯(いきさつ)を聞いたわけではないのに、言い切るその後ろ姿にシノハからの信用を大きく感じた。 それが嬉しかった。
「戦いも出来ないヤツが大きな事を言うんじゃないよ!」
「戦い? 争う気もなければ戦う気もない」
「お前、ドンダダの邪魔をしただろう」 先ほどまでと違って声を低めて言う。
(聞かれたくない話か) 思うと表情を変えず、すぐに答えた。
「何のことだ」
「しらばっくれるんじゃないよ!」
また右拳が飛んできた。 それを軽くかわす。 次に足が飛んできた。 簡単にかわす。
(低い) 振り上げられた足の高さがない。 柔軟性を感じない。
(こいつ・・・下手か?)
ファブアは次から次へと、拳と足をシノハに繰り出すが、ことごとく避けられる。
その時、トデナミと共にタム婆がやって来た。
「ファブア! 何をしておる!」 ジャンムの声を聞いて、小屋に居たタム婆とトデナミもやってきたのだ。
ファブアはシノハを伸(の)そうと躍起になっていてタム婆の声に気付かない。
「ファブア! 婆様だ!」 ファブアの仲間かその上のドンダダの仲間かが、ファブアの手を止めた。
「え? ば・・・婆様・・・?」 息を切らせたファブアがタム婆を見た。
「何をしておる」 タム婆がもう一度言葉を重ねた。
「あ・・・その・・・よそ者のクセにコイツが生意気だったんで・・・」 息も上がらず平然な顔で立っているシノハを見た。
シノハは誰にも咎められる事はしない、言わない。 と言いたかったが、それは言えない。 まず第一に村の者を立てなければいけない。
「何をしておると聞いておるんじゃ」
「あの・・・それは・・・」
「今日は身体を休める日じゃ。 要らぬ事をするな!」
「・・・はい」
「じゃが、これだけ多くの者が見ておったんじゃ。 村々の掟は知っておるな?」
「はい」
他所の村の者に対して先に手を出した方が、出された側から改めて勝負を申し入れする事が出来る。 最初の勝負がどうであれ、その時の勝ち負けは関係ない。 出された側が勝負を申し入れたその勝負での勝ち負けが結果となる。 今は拳であったが、己の得意とする勝負にすることが出来る。 剣が得意なら勝負を剣に変えてもいい。
「シノハも知っておるな」
「はい」
「どうする?」
「申し入れは致しません」 チッ、といった顔でファブアがシノハを見た。
「そうか。 ならばこれまでじゃ。 みな今日は身体を休めろ」
言われファブアはまだ少し息を荒げながら、仲間を連れてこの場を後にした。 その仲間の一人が口の端に不気味な笑みを浮かべた。
(ここらで・・・) ファブアとシノハの戦いを見て、ファブアは自分より随分と弱いと確信した。
(あとは・・・) ファブアの後姿を見ながら顎に手をやった。
その場に残った男たち、見守っていた女たちは怒(いか)らせていた肩を落とした。
「婆様・・・」 シノハがタム婆を見た。
「どういう事じゃ?」
「分かりません。 ですが、タイリンが殴られたみたいです」
タム婆がタイリンを見ると、シノハがすぐに座り込んでいるタイリンの元に戻りしゃがんだ。
「タイリン、痛くないか?」 シノハとタイリンの姿を見たタム婆が、声を大きく皆へ問いかけた。
「誰か、説明しろ!」 言われ、一人の女が口を切った。
「アタシらと、この男たちとで話をしてたんです。 そしたらファブアたちが急にやってきて、タイリンを殴ったんです。 生意気なんだよって」
「あの時、ジャンムの父さんに加勢した事を、きっと今でも根に持っているんです」
「それに、すれ違いざま何もしていないトマムの頭を叩いたから、それを見ていたタイリンがトマムを庇ったのも気に食わないんだと思います」 女たちが順々に言う。
タイリンがジャンムの父親に加勢した事は以前、シノハが大声を出した時にトデナミから聞いて知っていた。
「男たち」 タム婆が小さくなっている男たちを見た。
「お前達はいったい何をしておったんじゃ」 男たちがキョロキョロと互いに目を合わせる。
「歳浅いタイリンがやられているのを、指をくわえてみておったのか!」 男たちが下を向いた。
「なんとか言え!」
「婆様、この男たちではファブアに逆らえません。 ファブアに逆らうとドンダダに何をされるか分かりませんから」 女が冷たい視線を男たちに送る。
「ああ、情けないったらありゃしないよ」 違う女が吐き捨てるように言って男たちを見た。
「お前たちはそんなにドンダダが恐いのか。 自分達で何とかしようと思わんのか!」
「お・・・俺たちだって・・・何とかしたいと・・・思ってます。 ・・・でも」 次の言葉が大切だというのに黙ってしまった。
「男ならシャンと喋れ!」
だが、頭を垂れて完全に黙ってしまった。
「婆様、あまり大きな声を出されては、せっかくお元気になられたお身体に触ります。 今日のところはここまでではいかがでしょうか」 トデナミがタム婆の身体を案じて言う。
「・・・ああ、そうじゃな」 いわれて力を抜くと、たしかに身体がきつくなってきていた。
「お前たちも身体を休めておけ。 女たちもまだ用をする時ではないじゃろう、小屋で休んでおけ」 言われた全員がゆっくりと動き出したが、小屋に向う気はないようだ。
タム婆が歩き出すのを見ると、トデナミが離れているタイリンを少し大きな声で呼んだ。
「タイリン、あとで薬草小屋へ来なさいね」
「これくらい何ともありません」
「駄目よ。 必ず来るのよ」
タイリンがシノハを見て、どうしようという目をしている。
「多分、色々声をかけたいんだろう。 行くといい」 タイリンが仕方なく頷いた。
座り込んでいるタイリンの横にしゃがんでいたシノハが膝を立てて座った。
「な、さっきの女たちの話だと・・・。 どういえば言いのかなぁ・・・」 頭をかいて首を傾げる。 その様子にタイリンも首を傾げる。
ジャンムが走りよってきてタイリンの横に一緒に座り込んだ。 そのジャンムを見て一旦、タイリンへの言葉を切った。
「ジャンム、知らせてくれて有難う」 えへへ、と恥ずかしそうに頭を掻いた。
視線をタイリンに戻すと話を続けた。
「はっきりと聞いていいか?」
「はい」 タイリンもジャンムも何のことかとシノハを見る。
「さっきの女たちの話だと、タイリンがファブアに楯突いたから殴られたみたいだけど、そうなのか?」
「はい」
「楯突いた事を後悔してないか?」
もし、少しでも迷いがあるようだったら、その切っ掛けを作ったのは己だ。 責任の取り方を考えなくてはならない。