みち ~道~ 第197回
『みち』 目次
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『みち』 ~道~ 第197回
「面白いでしょ? ね、だから最後には実家の土地に帰るのよ」 そう言いながら最後の線を最初の点に結んだ。 ペンを置き
「って、いい加減な私の閃きだけどね。 でもうちのお婆さんのいう事は結構当たってるからね。 ・・・ねぇ、琴音聞いてるの?」 琴音がボォッとしている。
「琴音?」 すると今書かれた五芒星を触りながら
「・・・この五芒星」
「ごぼうせい? それって何?」
「え? あ、うん」 やっと暦の声に気付き我に返ったように続けた。
「この星の形の事。 5つ角があるでしょ?」
「へぇー、五芒星って言うんだ」
「そう。 この五芒星。 ・・・この小さな三角の中に悠森製作所があるわ」 今の琴音の住んでいるマンションの点を頂点としたちいさな三角の事だ。
「え? 今の会社?」
「うん」
「あ、そうなんだ。 今の会社は年数が浅いから気にもならなかったわ」
「こんな事ってあるのかしら・・・」
「そうそう無いんじゃない?」
「あ、確かにそういう意味でもあるんだけど」
「なに?」
「五芒星っていうのは 安倍清明のマークでもあるのよ。 安倍清明って言ったら陰陽師なんだけど、うちのお爺さんが陰陽師の呪文を書いた掛け軸を持ってたみたいなの」
「ふーん、そんな事はよく知らないけど なに? これって琴音にとったらいい発見になったの?」
「考えさせられるって言った方がいいかな・・・」 そこまで言うとある事に気付いて
「あ、そうか。 ここにヒントがあったんだわ。 あの 雨の小屋根の絵のように・・・私の先を知ってるヒントが実家にあったんだわ・・・え? もしかして 私が陰陽関係の本を読んでいたのも関係があったの? 五芒星に気付けって言う事?」
「何ブツブツ言ってんの?」 独り言をいう琴音の顔を不思議そうに覗きながら続けて言った。
「ま、考えたかったら考えて。 とにかく琴音は実家の土地に帰る方が良いんじゃないの?」
「どうしよう。 私の先を教えてくれているとしてもまだその時期じゃないかもしれないし・・・」
「だーかーらー、何ブツブツ言ってんのよ」
「うん。 やっぱりまだ自信がないもの」
「ブツブツの次は なにグジグジ言ってるのよ。 どうせ今の会社を辞めたらまた仕事を探さなくちゃいけないんでしょ?」
「うん・・・」
「それなら試してみなさいよ。 それで駄目だったら仕事を探すか生活をみてくれる旦那さんを探しなさいよ」
「それは無いって言ってるでしょ」
「強情なんだから。 でも生活はしなくちゃいけないんだから それならやりたい事をやっていけた方がいいじゃない」
「分かってるんだけどね」
「ま、うちのお婆さんを信じてみれば?」
「もうちょっと考えてみる」
「そうね、まだ時間があるものね。 沢山悩みなさい、それも一つよ。 さっ、キッチンの掃除始めようか?」
「うん。 ご馳走様」 二人で重箱を片付けキッチンの掃除を始めた。
夕方。 雑巾を絞った暦が
「さ、これで片付いたわね」
「うん。 有難う。 例年に無く隅々まで出来たわ」
「どういたしまして。 じゃあ、今日の琴音の夕飯をお皿に移すわね」 重箱を開けた。
「一緒に食べていかないの?」
「一応、主婦だからね。 って、帰っても誰も居ないんだけど。 何かあるといけないから帰るわ」
「ホントに出来た嫁だわね。 でもまだ少しくらい良いでしょ? お茶くらい飲んでいくでしょ?」
「うーん。 そうね、頂こうかな。 言っとくけど出来た嫁じゃなくて文句を言われたくないだけよ。 じゃ、おかずは温めるものとそうでないものとに分けて入れるわね」 淡々と話す暦を見て
「うん」 そう返事をしながら(無駄がないなぁ・・・暦には迷いなんて無いよね。 自分はまだまだだ・・・) そんな風に思った。
「おにぎりはレンジで温めるのよ」
「はーい」
「何? その返事、おちょくってる?」
「全然。 はい、暦のお茶」
「ありがとう。 あ、お味噌汁作っておこうか?」
「それくらい自分で出来る」
「そうお? じゃあ、これでいい?」
「うん。 暦はいつから帰るの?」 聞かれた暦は皿に移したおかずやおにぎりにラップをかけている。
「31日に帰って2日の夜に帰ってくる予定」 ラップをかけ終え、割烹着を脱ぎ始めた。
「そっかー。 ご主人の方は?」
「今年は義父母が明日から3日まで義姉の家に遊びに行くらしいのよ。 だから私の実家から帰って主人の実家に行くの」 脱いだ割烹着を袋に入れやっと椅子に座った。
「はぁ、いいお嫁さんしてくるんだろうなぁ」
「いつもは年末からは主人の方なんだけどね、今年は逆になったわ」 お茶を一口飲み
「はぁー。 お昼の時もそうだったけど 人に入れてもらうお茶って美味しいわ」 両手で湯呑みを持ちもう一口飲んだ。
「それって言えてるわよね。 朝、暦の入れてくれたお茶が美味しかったもの」
「そお?」
「うん。 美味しかったわよ。 ねぇ、もしかしたらいつも年末に旦那さんの実家に行ってお節の準備とかしてたの?」
「そう。 うちのお重箱も持って行ってお姑さんとね」
「うわー。 私には無理だわ」
「何言ってるのよ。 なるようになるわよ。 それにそれが結婚よ。 あ、でも私はお姑さんに恵まれたからそう言えるのかもね」
「嫁姑戦争はないの?」
「そんなものはないわよ。 とっても優しい姑よ。 うん・・・でもね、多分旦那が居てくれてるからかしら」
「旦那さんが?」
「そう、前に言ってたでしょ。 平凡な幸せって。 覚えてない?」
「覚えてるわ。 でもそれがどうして?」
「旦那がね、お姑さんの前になるとそれとなく私を守ってくれてるの。 何気なくいつもそうしてくれてるのは分かってたんだけど・・・守らなくちゃいけないキツイお姑さんじゃないのにね。 それでね旦那と子供がテレビを見ながら笑ってる姿を見てる時に旦那に感謝ができたの。 感謝ができるって幸せな事じゃない? 姑だけの事じゃなくて子供と笑ってる一つをとってもね。 そしたら姑にも感謝できるようになったのよ。 それに優しい姑だし、だから戦争なんてないわよ」
「へぇー、まだラブラブなんだー」
「バカね! そんな筈ないじゃない。 今日だって飲みに行ってるのよ。 好き勝手やってるわよ」
「あ、置いてきぼりにされたから怒ってるんだ」
「違うわよ。 今日は忘年会。 あ、今日は!じゃなくて今日も! いくら平凡な幸せを感じてても それが24時間365日じゃないって事。 腹の立つ日もあるわよ」
「ふーん、そんなものなんだー」
「あ、こんな話をしたら余計に結婚がイヤになるわよね?」
「そんな話を聞いても聞かなくても結婚はしないから大丈夫」
「決心が固いわね。 あ、そう言えば 琴音はあの時なんて書いたのか思い出したの?」
「うん」
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「面白いでしょ? ね、だから最後には実家の土地に帰るのよ」 そう言いながら最後の線を最初の点に結んだ。 ペンを置き
「って、いい加減な私の閃きだけどね。 でもうちのお婆さんのいう事は結構当たってるからね。 ・・・ねぇ、琴音聞いてるの?」 琴音がボォッとしている。
「琴音?」 すると今書かれた五芒星を触りながら
「・・・この五芒星」
「ごぼうせい? それって何?」
「え? あ、うん」 やっと暦の声に気付き我に返ったように続けた。
「この星の形の事。 5つ角があるでしょ?」
「へぇー、五芒星って言うんだ」
「そう。 この五芒星。 ・・・この小さな三角の中に悠森製作所があるわ」 今の琴音の住んでいるマンションの点を頂点としたちいさな三角の事だ。
「え? 今の会社?」
「うん」
「あ、そうなんだ。 今の会社は年数が浅いから気にもならなかったわ」
「こんな事ってあるのかしら・・・」
「そうそう無いんじゃない?」
「あ、確かにそういう意味でもあるんだけど」
「なに?」
「五芒星っていうのは 安倍清明のマークでもあるのよ。 安倍清明って言ったら陰陽師なんだけど、うちのお爺さんが陰陽師の呪文を書いた掛け軸を持ってたみたいなの」
「ふーん、そんな事はよく知らないけど なに? これって琴音にとったらいい発見になったの?」
「考えさせられるって言った方がいいかな・・・」 そこまで言うとある事に気付いて
「あ、そうか。 ここにヒントがあったんだわ。 あの 雨の小屋根の絵のように・・・私の先を知ってるヒントが実家にあったんだわ・・・え? もしかして 私が陰陽関係の本を読んでいたのも関係があったの? 五芒星に気付けって言う事?」
「何ブツブツ言ってんの?」 独り言をいう琴音の顔を不思議そうに覗きながら続けて言った。
「ま、考えたかったら考えて。 とにかく琴音は実家の土地に帰る方が良いんじゃないの?」
「どうしよう。 私の先を教えてくれているとしてもまだその時期じゃないかもしれないし・・・」
「だーかーらー、何ブツブツ言ってんのよ」
「うん。 やっぱりまだ自信がないもの」
「ブツブツの次は なにグジグジ言ってるのよ。 どうせ今の会社を辞めたらまた仕事を探さなくちゃいけないんでしょ?」
「うん・・・」
「それなら試してみなさいよ。 それで駄目だったら仕事を探すか生活をみてくれる旦那さんを探しなさいよ」
「それは無いって言ってるでしょ」
「強情なんだから。 でも生活はしなくちゃいけないんだから それならやりたい事をやっていけた方がいいじゃない」
「分かってるんだけどね」
「ま、うちのお婆さんを信じてみれば?」
「もうちょっと考えてみる」
「そうね、まだ時間があるものね。 沢山悩みなさい、それも一つよ。 さっ、キッチンの掃除始めようか?」
「うん。 ご馳走様」 二人で重箱を片付けキッチンの掃除を始めた。
夕方。 雑巾を絞った暦が
「さ、これで片付いたわね」
「うん。 有難う。 例年に無く隅々まで出来たわ」
「どういたしまして。 じゃあ、今日の琴音の夕飯をお皿に移すわね」 重箱を開けた。
「一緒に食べていかないの?」
「一応、主婦だからね。 って、帰っても誰も居ないんだけど。 何かあるといけないから帰るわ」
「ホントに出来た嫁だわね。 でもまだ少しくらい良いでしょ? お茶くらい飲んでいくでしょ?」
「うーん。 そうね、頂こうかな。 言っとくけど出来た嫁じゃなくて文句を言われたくないだけよ。 じゃ、おかずは温めるものとそうでないものとに分けて入れるわね」 淡々と話す暦を見て
「うん」 そう返事をしながら(無駄がないなぁ・・・暦には迷いなんて無いよね。 自分はまだまだだ・・・) そんな風に思った。
「おにぎりはレンジで温めるのよ」
「はーい」
「何? その返事、おちょくってる?」
「全然。 はい、暦のお茶」
「ありがとう。 あ、お味噌汁作っておこうか?」
「それくらい自分で出来る」
「そうお? じゃあ、これでいい?」
「うん。 暦はいつから帰るの?」 聞かれた暦は皿に移したおかずやおにぎりにラップをかけている。
「31日に帰って2日の夜に帰ってくる予定」 ラップをかけ終え、割烹着を脱ぎ始めた。
「そっかー。 ご主人の方は?」
「今年は義父母が明日から3日まで義姉の家に遊びに行くらしいのよ。 だから私の実家から帰って主人の実家に行くの」 脱いだ割烹着を袋に入れやっと椅子に座った。
「はぁ、いいお嫁さんしてくるんだろうなぁ」
「いつもは年末からは主人の方なんだけどね、今年は逆になったわ」 お茶を一口飲み
「はぁー。 お昼の時もそうだったけど 人に入れてもらうお茶って美味しいわ」 両手で湯呑みを持ちもう一口飲んだ。
「それって言えてるわよね。 朝、暦の入れてくれたお茶が美味しかったもの」
「そお?」
「うん。 美味しかったわよ。 ねぇ、もしかしたらいつも年末に旦那さんの実家に行ってお節の準備とかしてたの?」
「そう。 うちのお重箱も持って行ってお姑さんとね」
「うわー。 私には無理だわ」
「何言ってるのよ。 なるようになるわよ。 それにそれが結婚よ。 あ、でも私はお姑さんに恵まれたからそう言えるのかもね」
「嫁姑戦争はないの?」
「そんなものはないわよ。 とっても優しい姑よ。 うん・・・でもね、多分旦那が居てくれてるからかしら」
「旦那さんが?」
「そう、前に言ってたでしょ。 平凡な幸せって。 覚えてない?」
「覚えてるわ。 でもそれがどうして?」
「旦那がね、お姑さんの前になるとそれとなく私を守ってくれてるの。 何気なくいつもそうしてくれてるのは分かってたんだけど・・・守らなくちゃいけないキツイお姑さんじゃないのにね。 それでね旦那と子供がテレビを見ながら笑ってる姿を見てる時に旦那に感謝ができたの。 感謝ができるって幸せな事じゃない? 姑だけの事じゃなくて子供と笑ってる一つをとってもね。 そしたら姑にも感謝できるようになったのよ。 それに優しい姑だし、だから戦争なんてないわよ」
「へぇー、まだラブラブなんだー」
「バカね! そんな筈ないじゃない。 今日だって飲みに行ってるのよ。 好き勝手やってるわよ」
「あ、置いてきぼりにされたから怒ってるんだ」
「違うわよ。 今日は忘年会。 あ、今日は!じゃなくて今日も! いくら平凡な幸せを感じてても それが24時間365日じゃないって事。 腹の立つ日もあるわよ」
「ふーん、そんなものなんだー」
「あ、こんな話をしたら余計に結婚がイヤになるわよね?」
「そんな話を聞いても聞かなくても結婚はしないから大丈夫」
「決心が固いわね。 あ、そう言えば 琴音はあの時なんて書いたのか思い出したの?」
「うん」