みち ~道~ 第186回
『みち』 目次
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『みち』 ~道~ 第186回
「私がお呼びしたんです」 笑いながら琴音が言った。
琴音たちのテーブルにやってきた更紗が
「ちょっと待ってよ! どうしてここに野瀬君が居るわけー!」 そう言って野瀬を睨むと
「私がお呼びしたんです」 野瀬に言った事と同じことを更紗にも言った。
「更紗さん、声が大きいですよ。 とにかく座ってくださいよ」 そう促され琴音の隣に座りながら
「野瀬君、今日はどうしてもご親戚の家に行かなきゃいけないって、さっき帰って行かなかった?」 怒り口調で更紗が言うと
「だから、声が大きいですよ。 それに更紗さんの方こそ、さっきこれからクライアントと会うって仰っていませんでしたか?」 疑問の言葉ではあるがその口調は強かった。
その様子が可笑しくて笑いかけた琴音が二人の間に入って
「待ってください。 私が企んだ事なんです。 お二人に同じ内容のメールを送ったんです」
「二人って?」 更紗と野瀬が同時に琴音を見た。
「だって、お二人とも同時に同じ内容のメールを送ってこられたんですもの。 私に気を使っていただいてたなんて思いもしなくて。 それにお二人には内緒ごとを作りたくなかったから。 みんなでお食事が出来たらと思って」
「あ、何―!? 野瀬君ったら抜け駆けして琴音さんにメールを送ってたってこと?」
「だから、更紗さん声が大きいですよ! それにそれはこっちの台詞ですよ。 更紗さんが暫くは織倉さんに連絡を取らないでおこうって言ったんじゃないですか!」 それを聞いていた琴音が
「もう、笑っちゃいけないけど・・・」 とうとう笑いをこらえられなくなってきた。
「織倉さん、笑い事じゃないですよ!」
「野瀬さん・・・野瀬さんも声が大きくなってきてますよ」 憮然とした顔の野瀬である。
「お二人のお気持ちは嬉しいです。 でも、正道さんも私に無理の無いようにゆっくりと進めて下さっていますからどうぞお気遣い無く」 二人の顔を見た。
「ま、仕方ないですね。 更紗さんが織倉さんに会いたい気持ちは僕が一番よくわかりますからね」 少し更紗を皮肉るように言った。
「その言葉、すっかりそのまま返すわよ。 それにしてもご親戚だなんて嘘つくなんて」
「更紗さんの方こそクライアントって言ってたじゃないですか」 前かがみになってまた声が大きくなってきた。
「まぁ、まぁ その事は・・・私が野瀬さんのご親戚であり更紗さんのクライアントっていう事で終わりませんか?」 琴音が二人を覗き込むと暫く間を置いて
「そうね、今の私たちってまるで子供よね」 クスッと笑いながら更紗が言った。
「ホントだ。 そう言えば更紗さんと仕事をし始めた時もこんな風でしたね」 心配そうに遠めにテーブルの様子を見ていたウエイターがやっと更紗のメニューをテーブルに置いた。
「あ、ありがとう。 大きな声を出してごめんなさいね」 ウエイターは微笑んで更紗の水とお絞りをテーブルに置き
「どうぞごゆっくり」 背筋の伸びたお辞儀をし踵を返した。
「さ、何を食べようかしら? 二人はもう注文をしたの?」
「まだですよ。 今来た所なんですから」
「え? そうなの? あ、でも考えたら私が迎えに行くって言ったら琴音さん断ったわよね。 どうして私じゃなくて野瀬君に迎えに来てもらうことを選んだわけ?」
「野瀬さんって、時間厳守ですから更紗さんとの時間の兼ね合いにズレが出ないだろうと思ってたんですけど、今日は早くいらしたからちょっと焦っちゃいました」
「もしかして、それで店に入ったときに時計を見てたんですか?」
「はい。 でも更紗さんが思ったより早くいらしてくださったから上手い具合にタイミングが合いました」
「え? 更紗さんが遅刻じゃないんですか?」
「当たり前じゃない、琴音さんと会うのに遅刻なんてするわけ無いじゃない」
「はぁー、それじゃあ僕との待ち合わせの遅刻って許せないなぁ」 溜息が出た。 すると更紗が野瀬を見ながら
「ふーん」 と目を細めながら一言いうと
「なんですか?」 水を飲みかけた野瀬が不思議そうに言った。
「時間厳守の野瀬君がねー」
「その僕の気持ちが一番分かるのは更紗さんでしょ?」 一口水を飲んだ野瀬がその言葉にすかさず答えた。
「まぁね。 分からなくも無いわね。 さて、何を食べようかしら? 野瀬君はどうせお肉でしょ?」 それを聞いた野瀬が琴音に向かって
「ね、同じことを言ってるでしょ?」 琴音が微笑んだがそれを聞いた更紗が
「何?」 と、野瀬と琴音を順に見た。
「野瀬さんが更紗さんと私が同じことを言って野瀬さんを苛めてるって」
「うふふ、いいじゃない、いいじゃない。 二人で野瀬君を苛めちゃおう」
「止めて下さいよ。 とにかく僕はステーキを食べますけどお二人は何にします?」 いつもの様に更紗と琴音がアレもいいコレもいいと言い合いながらやっとメニューを決め野瀬がウェイターを呼んだ。
注文を終えるとすぐに更紗も野瀬も正道との授業の話を聞いてきた。
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「私がお呼びしたんです」 笑いながら琴音が言った。
琴音たちのテーブルにやってきた更紗が
「ちょっと待ってよ! どうしてここに野瀬君が居るわけー!」 そう言って野瀬を睨むと
「私がお呼びしたんです」 野瀬に言った事と同じことを更紗にも言った。
「更紗さん、声が大きいですよ。 とにかく座ってくださいよ」 そう促され琴音の隣に座りながら
「野瀬君、今日はどうしてもご親戚の家に行かなきゃいけないって、さっき帰って行かなかった?」 怒り口調で更紗が言うと
「だから、声が大きいですよ。 それに更紗さんの方こそ、さっきこれからクライアントと会うって仰っていませんでしたか?」 疑問の言葉ではあるがその口調は強かった。
その様子が可笑しくて笑いかけた琴音が二人の間に入って
「待ってください。 私が企んだ事なんです。 お二人に同じ内容のメールを送ったんです」
「二人って?」 更紗と野瀬が同時に琴音を見た。
「だって、お二人とも同時に同じ内容のメールを送ってこられたんですもの。 私に気を使っていただいてたなんて思いもしなくて。 それにお二人には内緒ごとを作りたくなかったから。 みんなでお食事が出来たらと思って」
「あ、何―!? 野瀬君ったら抜け駆けして琴音さんにメールを送ってたってこと?」
「だから、更紗さん声が大きいですよ! それにそれはこっちの台詞ですよ。 更紗さんが暫くは織倉さんに連絡を取らないでおこうって言ったんじゃないですか!」 それを聞いていた琴音が
「もう、笑っちゃいけないけど・・・」 とうとう笑いをこらえられなくなってきた。
「織倉さん、笑い事じゃないですよ!」
「野瀬さん・・・野瀬さんも声が大きくなってきてますよ」 憮然とした顔の野瀬である。
「お二人のお気持ちは嬉しいです。 でも、正道さんも私に無理の無いようにゆっくりと進めて下さっていますからどうぞお気遣い無く」 二人の顔を見た。
「ま、仕方ないですね。 更紗さんが織倉さんに会いたい気持ちは僕が一番よくわかりますからね」 少し更紗を皮肉るように言った。
「その言葉、すっかりそのまま返すわよ。 それにしてもご親戚だなんて嘘つくなんて」
「更紗さんの方こそクライアントって言ってたじゃないですか」 前かがみになってまた声が大きくなってきた。
「まぁ、まぁ その事は・・・私が野瀬さんのご親戚であり更紗さんのクライアントっていう事で終わりませんか?」 琴音が二人を覗き込むと暫く間を置いて
「そうね、今の私たちってまるで子供よね」 クスッと笑いながら更紗が言った。
「ホントだ。 そう言えば更紗さんと仕事をし始めた時もこんな風でしたね」 心配そうに遠めにテーブルの様子を見ていたウエイターがやっと更紗のメニューをテーブルに置いた。
「あ、ありがとう。 大きな声を出してごめんなさいね」 ウエイターは微笑んで更紗の水とお絞りをテーブルに置き
「どうぞごゆっくり」 背筋の伸びたお辞儀をし踵を返した。
「さ、何を食べようかしら? 二人はもう注文をしたの?」
「まだですよ。 今来た所なんですから」
「え? そうなの? あ、でも考えたら私が迎えに行くって言ったら琴音さん断ったわよね。 どうして私じゃなくて野瀬君に迎えに来てもらうことを選んだわけ?」
「野瀬さんって、時間厳守ですから更紗さんとの時間の兼ね合いにズレが出ないだろうと思ってたんですけど、今日は早くいらしたからちょっと焦っちゃいました」
「もしかして、それで店に入ったときに時計を見てたんですか?」
「はい。 でも更紗さんが思ったより早くいらしてくださったから上手い具合にタイミングが合いました」
「え? 更紗さんが遅刻じゃないんですか?」
「当たり前じゃない、琴音さんと会うのに遅刻なんてするわけ無いじゃない」
「はぁー、それじゃあ僕との待ち合わせの遅刻って許せないなぁ」 溜息が出た。 すると更紗が野瀬を見ながら
「ふーん」 と目を細めながら一言いうと
「なんですか?」 水を飲みかけた野瀬が不思議そうに言った。
「時間厳守の野瀬君がねー」
「その僕の気持ちが一番分かるのは更紗さんでしょ?」 一口水を飲んだ野瀬がその言葉にすかさず答えた。
「まぁね。 分からなくも無いわね。 さて、何を食べようかしら? 野瀬君はどうせお肉でしょ?」 それを聞いた野瀬が琴音に向かって
「ね、同じことを言ってるでしょ?」 琴音が微笑んだがそれを聞いた更紗が
「何?」 と、野瀬と琴音を順に見た。
「野瀬さんが更紗さんと私が同じことを言って野瀬さんを苛めてるって」
「うふふ、いいじゃない、いいじゃない。 二人で野瀬君を苛めちゃおう」
「止めて下さいよ。 とにかく僕はステーキを食べますけどお二人は何にします?」 いつもの様に更紗と琴音がアレもいいコレもいいと言い合いながらやっとメニューを決め野瀬がウェイターを呼んだ。
注文を終えるとすぐに更紗も野瀬も正道との授業の話を聞いてきた。