僕と僕の母様 第46回
僕と僕の母様 第46回
『威風堂々』
結局、部員の中では曲が決めきれず 先生の意見を仰いだのだ。
吹奏楽でよく演奏する曲だそうだ。 タイトルだけ聞いても どんな曲か分からなかったが
「この曲を知らないと思っている者、大きな勘違いだぞ」 そういって先生がCDをかけてくれた。
暫らくして ああ、確かにどこかで聞いたことがある曲だ。
この曲を知らないと思ってた部員も 僕と同じように思ったらしく どこからともなく「ああ、」 という何人かの声が聞こえた。
先生が譜面の用意もしてくれていて 僕も受け取った。
一年生と 僕と同級の新入部員にも配られたが こちらはコンクールへの出場は 無理ということだった。
早い話が サックスのパートは 僕一人が吹くということなのだ。
まあ、三年生が多いから 何とかなるかもしれないけど サックスに限らず 殆どのパートが一人だけだ。
配られた譜面をじっと見ながら 本当に僕に吹けるのだろうかと不安になってきた。
一年サックスが 僕の隣にやってきて「先輩頑張って下さい」 と言ってくれたけど 何なら代わろうか? って言いたい気分だ。
その日家に帰って
いつも通り玄関のドアを開けて 一度目の「ただいま」 そして一度目の「お帰り」
リビングのドアを開けて 二度目の「ただいま」 そして二度目の「お帰り」
いつもの僕と母様だ。 母様はキッチンに居た。
僕は着替えもせずに キッチンに居る母様に向かって
「お母さん『威風堂々』 って知ってる?」 聞いてみた。
「何それ?」 何のこと? といった感じで キッチンから 僕を見ながら歩いてくる。
「曲、吹奏楽でよく演奏している曲なんだって。 ほらこんな曲」 そういって譜面を見せた。
母様が譜面を見ながら 足でリズムをとって口ずさむ
「音程ずれてマース」 笑いながら言った。
「うるさいわねー ソルフェージュ苦手なんだから。 ・・・でもどんな曲か分からないわ。 お母さんの知ってる曲なの?」 そう言ってピアノに向かって行った。
「弾いてみれば 分かるかもしれないよ」 ピアノで弾けば分かるだろう。
メロディーの所だけを弾いていく。
「こんな曲知らないわよ」 ピアノの手を止め 僕の方を見てそう言った。
「もう少し先まで弾いてみたら 分かるかもしれないよ」 何故かニヤニヤしてしまっている僕が居た。
こういう時間って 面白い。
相手が分かりそうで分からない でも相手がこの事を 知っていることを僕は知っている ・・・ 何故かワクワクしてしまう。
これも根性が悪いのかなぁ?
サビの部分になってやっと
「ああー、この曲かぁー。 この曲が『威風堂々』 って言うんだ、今度のコンクール予選の曲?」 やっと分かったみたいだ。
僕のお楽しみの時間も これでお終いだけど 今度は純粋に 母様に質問があった。
「うん そう。 ねぇねぇ 僕に出来ると思う?」 僕の実力で出来るかどうか 母様の意見を仰ぎたかったのに あんまり僕の質問を聞いていない。 まだ譜面に見入ってる。
「ふーん、この曲をするんだ」 仕方ないか この母様だもんな。 それに とっても気に入ったようだ。
「がんばってね」 質問の答えだろうか・・・?
それからも母様は キッチンでの用事を忘れて 暫らくピアノを弾いていたから 僕の夕飯が少し遅くなった。
部活の方は いつものお喋りタイムを返上して みんな練習に没頭した。
週三回の練習も毎日に変わった。
このクラブもやれば出来るんじゃん なんて、客観的に見ながらも 僕も焦ったりしていた。
それぞれが 個人で練習をするのがメインで 殆ど合わせるといったことはしなかった。
まずそんなことをされたら 僕は困ってしまう。
僕だって他の新入生と同じくらいのレベルなんだ。 出来ればこの出場メンバーから 外してほしいほどなのに 先生はそんな気は毛頭ない といった感じで 僕に教えてくれている。
先生の期待に応えたいけど 絶対に無理だ。
これをプレッシャーと言うのだろうか、もしそうだったら
僕はプレッシャーに勝てない人間だ。
最後まで読んで頂きまして有難う御座います。
参加しております。クリックのご協力をお願い致します。
にほんブログ村
有難う御座いました。
『威風堂々』
結局、部員の中では曲が決めきれず 先生の意見を仰いだのだ。
吹奏楽でよく演奏する曲だそうだ。 タイトルだけ聞いても どんな曲か分からなかったが
「この曲を知らないと思っている者、大きな勘違いだぞ」 そういって先生がCDをかけてくれた。
暫らくして ああ、確かにどこかで聞いたことがある曲だ。
この曲を知らないと思ってた部員も 僕と同じように思ったらしく どこからともなく「ああ、」 という何人かの声が聞こえた。
先生が譜面の用意もしてくれていて 僕も受け取った。
一年生と 僕と同級の新入部員にも配られたが こちらはコンクールへの出場は 無理ということだった。
早い話が サックスのパートは 僕一人が吹くということなのだ。
まあ、三年生が多いから 何とかなるかもしれないけど サックスに限らず 殆どのパートが一人だけだ。
配られた譜面をじっと見ながら 本当に僕に吹けるのだろうかと不安になってきた。
一年サックスが 僕の隣にやってきて「先輩頑張って下さい」 と言ってくれたけど 何なら代わろうか? って言いたい気分だ。
その日家に帰って
いつも通り玄関のドアを開けて 一度目の「ただいま」 そして一度目の「お帰り」
リビングのドアを開けて 二度目の「ただいま」 そして二度目の「お帰り」
いつもの僕と母様だ。 母様はキッチンに居た。
僕は着替えもせずに キッチンに居る母様に向かって
「お母さん『威風堂々』 って知ってる?」 聞いてみた。
「何それ?」 何のこと? といった感じで キッチンから 僕を見ながら歩いてくる。
「曲、吹奏楽でよく演奏している曲なんだって。 ほらこんな曲」 そういって譜面を見せた。
母様が譜面を見ながら 足でリズムをとって口ずさむ
「音程ずれてマース」 笑いながら言った。
「うるさいわねー ソルフェージュ苦手なんだから。 ・・・でもどんな曲か分からないわ。 お母さんの知ってる曲なの?」 そう言ってピアノに向かって行った。
「弾いてみれば 分かるかもしれないよ」 ピアノで弾けば分かるだろう。
メロディーの所だけを弾いていく。
「こんな曲知らないわよ」 ピアノの手を止め 僕の方を見てそう言った。
「もう少し先まで弾いてみたら 分かるかもしれないよ」 何故かニヤニヤしてしまっている僕が居た。
こういう時間って 面白い。
相手が分かりそうで分からない でも相手がこの事を 知っていることを僕は知っている ・・・ 何故かワクワクしてしまう。
これも根性が悪いのかなぁ?
サビの部分になってやっと
「ああー、この曲かぁー。 この曲が『威風堂々』 って言うんだ、今度のコンクール予選の曲?」 やっと分かったみたいだ。
僕のお楽しみの時間も これでお終いだけど 今度は純粋に 母様に質問があった。
「うん そう。 ねぇねぇ 僕に出来ると思う?」 僕の実力で出来るかどうか 母様の意見を仰ぎたかったのに あんまり僕の質問を聞いていない。 まだ譜面に見入ってる。
「ふーん、この曲をするんだ」 仕方ないか この母様だもんな。 それに とっても気に入ったようだ。
「がんばってね」 質問の答えだろうか・・・?
それからも母様は キッチンでの用事を忘れて 暫らくピアノを弾いていたから 僕の夕飯が少し遅くなった。
部活の方は いつものお喋りタイムを返上して みんな練習に没頭した。
週三回の練習も毎日に変わった。
このクラブもやれば出来るんじゃん なんて、客観的に見ながらも 僕も焦ったりしていた。
それぞれが 個人で練習をするのがメインで 殆ど合わせるといったことはしなかった。
まずそんなことをされたら 僕は困ってしまう。
僕だって他の新入生と同じくらいのレベルなんだ。 出来ればこの出場メンバーから 外してほしいほどなのに 先生はそんな気は毛頭ない といった感じで 僕に教えてくれている。
先生の期待に応えたいけど 絶対に無理だ。
これをプレッシャーと言うのだろうか、もしそうだったら
僕はプレッシャーに勝てない人間だ。
最後まで読んで頂きまして有難う御座います。
参加しております。クリックのご協力をお願い致します。
有難う御座いました。