みち  ~未知~  第88回

大福りす
『みち』 目次



『みち』 第1回から第50回までの目次は以下の 『みち』リンクページ からお願いいたします。

  『みち』リンクページ



『みち』 第51回からは以下からになります。

第51回第52回第53回第54回第55回第56回第57回第58回第59回第60回
第61回第62回第63回第64回第65回第66回第67回第68回第69回第70回
第71回第72回第73回第74回第75回第76回第77回第78回第79回第80回




                                             



『みち』 ~未知~  第88回



数日後、本の返却があったので図書館に向かった。 そのまま次を借りようと『天兒屋根命』 の本を探すがその神の名の本がない。
「はぁー、あんまり有名な神様じゃないのかしら」 神様に有名も無名もないよ。 それに他の方面から調べられるだろ、よく考えてみなさい。


翌朝、布団の中で目が覚めたと思った途端 『ホツマツタエ』 と頭に浮かんだ。

「え? これって何?」 布団から出ても何をしていても頭から離れない。

「どうしてこんな事が思い浮かんだの?」 思い出さないかい?

「あん、もう! 頭から離れてよ」 歯を磨いていても、朝のテレビを見ていても、朝のトーストを食べていても頭から離れない。

「あ、そう言えば・・・思い出したわ。 確かPCで読んだけど何が書かれてあるか分からなかったあれよね。 どうして急にそんなものを思い出したのかしら。 それも目が覚めてすぐになんて・・・。 あれは何度読んでも意味が分からないわよ。 頭から消えてちょうだい」 自分の頭から追い払うように手で扇いだ。

だがそんな事をしても頭から離れない。 その上、いざ出勤しようと玄関に向かう廊下を歩いていると『ホ』『ツ』『マ』『ツ』『タ』『エ』 と一文字一文字がまるでカタカナの形をしたブロックのように その文字の形をもって琴音の頭にコツンコツンと降ってきた。 いや正確にはそんな気がした。

「ちょっと何なのよ。 しつこいわね」 玄関で靴を履こうとすると幾つも幾つもその文字がスピードを増して降ってくる。 コン、コン、コン、コン、コン・・・まるで少し大き目な金平糖が降ってきているようだ。

「もう! 痛いわよ!」 頭の上を振り払うが コン、コン、コン、コン、コン・・・一向に止まない。

靴を履き終えた琴音が上を見て

「痛いわねー、分かったわよ! 読めばいいでしょ!」 そう大声で言うと 大きな金平糖はすぐに止んだ。

「え? 何なのこれ?」 甘いお菓子だよ。



昼近くになると事務所のドアが開き客が入って来た。

「こんにちは」 たまたま表の事務所に居た社長を見て客が声をかけた。

机の上に置かれた資料を見ていた社長が顔を上げると満面の笑みで

「やぁ、お久しぶりです。 どうされてたんですか。 うわ、何年ぶりかなぁ」 琴音は始めて見る客であったが 社長の言葉を聞いてすぐに長い付き合いだった取引先の客だと分かった。

「いや、急にすみません。 近くまで来たものですからちょっとお顔だけ拝見しようかと。 お元気そうですね」

「いやいや、もう歳です。 身体のあちこちにガタがきてますよ。 それよりお急ぎですか? これから何か予定があるんですか?」

「いえ、もう用が終わってあとは新幹線で帰るだけです」

「新幹線の時間は?」

「まだまだです。 社長のお顔を拝見してからちょっと観光でもして帰ろうかと」 冗談めいた会話が続いた。

「それならもう昼になりますから昼ごはんでも一緒にどうですか?」

「あ、お忙しいんじゃないんですか? お元気そうなお顔さえ拝見出来ればと寄っただけですから」

「忙しかったらこんな暇そうな顔をしていませんよ」

「ほんとに不景気で、お互い様です」 社長がお茶を入れようとしていた琴音のほうを見て

「織倉さん、お茶はいいですから奥のみんなを呼んで来てもらえますか」

「はい」 手を止め、奥の事務所に入って行った。

PCに向かって仕事をしている者、資料を広げている者、みんな仕事をしている振りをしていたが実際にはさっきまでPCでゲームをしていたのだ。 琴音の足音に気付いて慌てて仕事のふりだ。 

「あの、お客様が来られていて社長が皆さんをお呼びです」

「客ですか?」 PCの前に座っていた一人の社員が振り返って聞いた。

「はい」

「誰です?」

「あ、すみません。 お名前は聞いていません。 社長がお久しぶりと言ってらっしゃいました」

「誰だろ? あ、いいですよ。 すぐ行きます」

「お願いします」 その会話を聞いて資料を広げていた一人が歩き出し表の事務所に入った途端

「あれー! どうしたんですか? お久しぶりです」 大きな声が聞こえた。 すると残っていた社員が気になったようで PCもそのままに全員すぐに表の事務所に歩き出した。

「わー、 久しぶりです!」 全員同じ事を言っている。 奥の事務所からみんなに遅れて表の事務所にやって来た琴音。

「みんな知ってる方なのね」

「久しぶりだから みんなで昼を食べに行かないか?」 社長がみんなの方を見て言うと

「行きます、行きます」 みんな弁当持ちだが今日は残して帰るのだろう。 帰って嫁の頭から角が生えても知らないよ。

「織倉さんそう言う事だから。 ちょっと昼休みには早いけどみんなで食べに出るね。 昼休みを過ぎて帰ってくるかもしれないけど 事務所、一人で大丈夫かい?」 社長が琴音を気遣ってそう言ってきた。

「はい、大丈夫です」

「じゃあ、頼むね。 何かあったらすぐに携帯に電話をして来るんだよ」

「はい」 気遣ってもらっている事に心が温まる。