僕と僕の母様 第148回
僕と僕の母様 第148回
日曜日に 求人募集のチラシが よく入るのだが 気になる所があった。
2学期も もう少しで 終わろうかとする 11月の終わりに その一つに 電話をして 面接をお願いした。
生まれて初めて書く 履歴書だった。 それを持って 面接に行き 見事雇って貰えることになった。
うどん屋さんで チェーン店に なっているらしい。
殆どが パートさんで 僕が一番若い。
学校が終わって 駅を降りた家までの帰り道に あるのだが 午後7時から入るので 一度家に帰って ご飯を食べて そして出直す といった感じだ。
夜は0時閉店なので 深夜1時までの仕事だ。
仕事自体は 楽しいわけではないし 鍋なんかで よく火傷もする。 それに 話しかけてくるのは 母様よりかは若いのは確かだが みんなおばさんだ。 20代30代の おばさんの話には のっていけない。
唯一 楽しみと見いだせるのが やっと叶った念願の アルバイトということと マネージャーが 24歳の男の人なのだが この人との会話だ。
僕がバイトに入ってすぐに 僕を気に入ってくれたようで 閉店後二人でよく話し、数週間後には 彼女とのデートにも 何度か付き合わされた。 そして その彼女にも 気に入られてしまった。
母様には 毎日帰りが遅いと 怒られていた。 母様は 寝ないで 起きて待っていたのだ。
「起きてなくていいって言ってるでしょ」 起きていられると こっちが気を使ってしまう。
「高校生が 帰ってこないのに 先に寝る親がありますか」 母様はそう言うけど ウトウトしているみたいで 言ってしまえば 寝ぼけ眼で 帰ってきた僕に「おかえり」 ということが 多くなってきたのだ。
ある日 母様が急に
「ねぇ、来年の五月の連休でもいいから 旅行に行かない?」 唐突だ。
「え、急に何を 言い出すの?」
「試験も合格したし、大学生になったら もう旅行なんて 行けないじゃない」
「いいけど お母さんは 何処に行きたいの?」
「うーん・・・一応、お母さんが 行ってみたいのは ニュージーランドとか オーストラリア方面かな」
「はあ? 旅行って海外のこと?!」 いったい 何を言い出すんだ。
「うん、お母さん 海外に行ったことないし 陵也も 行ったことないじゃない? 男がこの時代において 大学生にも なろうかという年齢で 海外に行ったことない って言うのは ちょっと 恥ずかしいじゃない。 友達に誘われたときに「僕初めてです」 って言うのも なんだかね。 まあ、相手が 正太君なら そんなことも 無いでしょうけど。 それに もしこのままチャンスがなくて 結婚でもして 新婚旅行が海外で お嫁さんに 頼るっていうのも 考え物じゃない」
「まあ、そう言われれば」
「行きたくない?」
「いやいや、行きたいに 決まってるじゃん。 それより この家に そんなお金が あるのかなって思って」
「だって、もう一生 こんな事は ないんだから それにお金かけて 一ヶ月間 ご飯食べないでも いいじゃない」
「行く前に 死んじゃうよ。 それと 五月はちょっと無理。 絶対に バイトに来て って言われてる」
「そうか じゃ、卒業式が終わってからに しようか。 3月とかでも 大丈夫?」
「それなら良いけど。 お母さんの 仕事の方はいいの?」
「うん、店長に相談してみる。 じゃ、今度旅行会社に行って パンフレット取ってくるね」 そんな楽しみが せっかくあったのに 話はひっくり返ってしまった。
何日かして 母様がパンフレットを持って 帰ってきた。
「今日、お店の方に 休みを貰えるよう頼んだら いいって言ってくれたから 絶対に行こうね」 ノリノリだ。
「うん・・・あの 話が違うんだけど」 言いにくいな・・・。
「何?」
「えっと 右手の指の骨が 外れるんだ。 何度か外れては 戻すんだけど 激痛で・・・ペットボトルを 持っただけで外れる」
「どこ? いつからだったの?」 慌てて僕の手を 取って見た。
「二週間ほど 前からかな」
「何で今頃言うのよ。 もっと早くに 言わないの!」 かなり心配している。
最後まで読んで頂きまして有難う御座います。
参加しております。クリックのご協力をお願い致します。