みち  ~道~  第144回

大福りす
『みち』 目次



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『みち』 ~道~  第144回




「さ、これでやっと落ち着いた。 話の続きですけど織倉さんは奴奈川姫の事に詳しいようでしたけど他には?」

「詳しくはありません。 少し知っているだけです。 でも他には瀬織津姫(せおりつひめ) も大好きです」

「おおー、そう来ますか」

「野瀬さんは?」

「そうですねー、ニギハヤヒかな?」

「あー、いいですね。 私は最初ニニギの命から知ったんですけど。 どうもニギハヤヒの方が良く感じたんです」

「嬉しいなぁ こんな会話できるのは織倉さんだけだなぁ」 

「私もですよ。 でも神々の事は難しいですね。 古事記や日本書紀に書かれていることを鵜呑みにも出来ないしあまりにも諸説あり過ぎて・・・」

「そうなんですよね。 大体、スサノオの命にしてもそうですよ。 神話ではその名前でボロカスに書かれているのに別の名前では持ち上げられてって」

「私、最初神々のことは神話から入ったんですね。 だからどうしてもそのイメージが抜けないんですけど 全員とはいえないけど神話の神々って実在人物ですよね?」

「僕もそう思ってます。 時の権力者がその人物の名を消すためにとんでもない出鱈目を書いたんだと思ってます。 そう思うと瀬織津姫もその一人ですよね」

「そうなんですよね。 瀬織津姫は出鱈目こそ書かれていませんけど、そのお名前を完全に消されていますから寂しいですね」

「確か瀬織津姫の名前は大祓の祝詞にしか残されていなかったんですよね」

「そうみたいですね。 そう思うと菊理姫(くくりひめ) も神話でちょっと出てくるだけですし 多分まだ他にもそのお名前が消されている神々が沢山いると思います」

「日本書紀は藤原不比等が絡んでますけどきっと古事記にも絡んでるんじゃないかなぁ」

「あ、私もそんな事を書かれた 本を読んだことがあります」

「やっぱりそうですか。 藤原不比等にしたら瀬織津姫や菊理姫に居てもらっては困ったんでしょうね」 そこへ料理が運ばれてきた。

もちろん野瀬は相変わらずステーキだ。 琴音が頼んだ白菜のグラタンのセットにはサラダが付けられている。 サラダを見た野瀬が

「ちょっと寒いですけど旬の生野菜もいいでしょ?」 

「はい 美味しそうです」 そのサラダに一際目立つ綺麗な赤があった。

「あら? これは金時人参ですか?」 皿を並べているウエイターに聞くと

「はい。 とても美味しい時期ですからポタージュにしても美味しいんですけが 生も甘みがよく分かって美味しく出来上がっております。 どうぞお召し上がり下さい」

「有難うございます」 

「じゃ、食べましょうか」 琴音とウエイターの会話が終わったのを見て野瀬が言った。

「はい。 金時人参なんて私のお給料じゃ高くてなかなか買えないんですよ。 実家のお節でしか食べることがないんですね。 それをサラダだなんて贅沢だわ」 そして頂きますと言って金時人参を口に運ぶと

「わ、甘~い。 美味しい」 琴音の幸せそうな顔を見て

「本当に連れて来た甲斐があるなぁ」 それからも食事をしながらの縄文の神々の話は続き食後のコーヒーを飲みながら

「さて、織倉さん明日はまた仕事ですね」 

「あと二日頑張らなくちゃです」

「じゃ、今日はそろそろ帰りましょうか」

「はい。 ご馳走様でした」

「僕に言わないでください。 言ったでしょ、経費だって」

「分かってますけど言わなくちゃ」

「ほら、貧乏性が出た。 ドシンと構えるんでしょ」

「ご挨拶はちゃんとしなくちゃですよ」

「織倉さんって・・・」

「はい?」

「ある意味、更紗さんと似てますね」

「え?」

「さ、帰りましょうか」