みち ~道~ 第202回
『みち』 目次
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『みち』 ~道~ 第202回
「へぇー 結構立派に建ってるじゃないか。 なんだ、建物から始めてるのか?」
「建てかけてるって言ってたのに聞いてくれてなかったんだ。 だからまだまだなの」 正道の車から少し離れた所に停めた。
車から降りた父親が建物を見て回っている。 母親は山の方を見ている。 そこへプレハブのドアが開く音がした。 出てきたのは仔犬を抱いた正道だ。
「あら? 琴音さんじゃないですか」
「正道さん、車があったからもしかしたらと思いましたが やっぱり正道さんがいらっしゃってたんですね」
「はい。 明けましておめでとうございます。 今年も宜しくお願いします」 うっかり新年の挨拶を先にし損ねた琴音が慌てて
「あ、明けましておめでとうございます。 こちらこそ本年も宜しくご指導ください」 そう頭を下げて 次に正道の腕の中に居る仔犬の頭を撫でながら
「明けましておめでとう。 今年も元気に過ごそうね」 そう言って今度はまた正道を見直して
「正道さんはどうして今日は此処にいらっしゃったんですか?」
「実は仔犬を取りにきましてな」
「仔犬ちゃんをですか?」
「今日までは工事の方が自宅で見ていてくださったんですけど、急に田舎でご不幸があったから帰らなくちゃいけなくなったと早朝連絡がありましてな。 仔犬は連れて行けないでしょうから プレハブに連れてきておいて下さいと言っておいたんです」
「それじゃあ、今日からは?」
「私が連れて帰ってみようかと思ってるんですがね。 私が出かけている時に慣れない場所で大人しくしててくれますでしょうかね」 そう言って笑っている。
すると琴音の後ろから
「琴音、どなただ?」 建物を見て回っていた父親が琴音に声をかけてきた。
「あ、お父さん。 あの、正道さん私の父です」 その様子を見ていた母親も駆け寄ってきた。
「・・・と母です」
「おお、これはこれは。 琴音さんのご両親様でいらっしゃいますか。 何のご挨拶にもお伺いしませんで申し訳ありません。 琴音さんお願いできますか?」 抱いていた仔犬を琴音に預け
「初めまして、わたくし正道と申します。 この度は琴音さんのお力をお借りしてこのような事を始めようと思っております」 そして次に琴音を見て
「琴音さん、ご両親様にどんな事をするかの説明はされていますでしょうか?」
「はい。 漠然とですが。 でも・・・」 そこまで言うと何を言わんとしているのか察した正道が今度はまた両親の方を見て
「ご両親様にとってはどこの誰とも分からない私と大切な琴音さんが新しい事を始めるという事には不安でいらっしゃるかと思います。 また、世に聞き慣れないことを始めます。 ですが琴音さんのお力はとても素晴らしい物です。 その琴音さんのお力を待っている動物たちがいることをどうかご理解いただけないでしょうか」 暫く黙って正道をじっと見ていた父親が
「こちらこそ、こんな娘ですが宜しくお願いいたします」 深々と頭を下げた。 その姿を琴音が見て
「お父さん! いいの? 賛成してくれるの?」
「お前はまだ何も出来ないようだけどこの方にならついて行きなさい」 それを聞いていた正道が
「有難うございます」 頭を下げた。
「有難う お父さん」 抱いていた仔犬をぎゅっと抱きしめた。
「琴ちゃん その犬は?」 話が一段落した様子を見て母親が聞いた。
「あ、捨てられていたらしいんだけど ここでみんなで見てるの。 でも、ちょっと事情があって今日からは正道さんが連れて帰・・・」 ここまで言うと何を閃いたか
「ね、お母さん お正月休みの間だけでもうちでこの仔を見てもいい?」 琴音のその言葉を聞いて正道が慌てて
「琴音さんそれはご迷惑ですよ」 すると琴音に代わって母親が
「あら、いいですよ」 正道の方を見ては言っていない仔犬を見ながらだ。 そして続けて
「可愛いわねぇ。お名前はなんて言うのかなぁ?」
「笑っちゃうけど 仔犬ちゃんって言うのよ」
「仔犬ちゃん? お名前を笑っちゃ駄目よねー。 そう、仔犬ちゃんって言うのね。 今日は」 そういいながら母親が仔犬のほっぺを撫でて
「琴ちゃん、お母さんに抱っこさせて」 母親に仔犬を預けると
「正道さんまだお忙しいんですよね? うちなら父も母もずっと家に居ますし 私もあと何日か実家に居ますから。 今度・・・年明け最初こちらに来るときに私が連れてきます」 するとその会話に父親が割って入ってきた。
「ほぅ、お正月だというのに仕事ですか?」
「お恥ずかしながら 貧乏暇無しで年中無休です。 あっと、こんなことを言うと余計にご心配されますな」
「いや、いや。 そんな事はありません。 失礼ですがこの新しく始めようとされてる事でお忙しいんですか?」
「いえ、こちらの事はゆっくりと進めています。 今までしてきた・・・といいますか今もしておりますが 人様の体調を整えるほうの仕事が引っ切り無しでして 今の時代、皆さんストレスを抱えていらっしゃるようです」
「ほぅー。 そんな仕事をされているんですか。 体調を整えるですか・・・難しそうですね。 では、今後はこちらの方と二束の草鞋で?」
「こちらの方が進んでいきましたら今のところは弟子に任せます。 私はこちらの方に専念したいと思っていますので」
「お弟子さんがいらっしゃるんですか?」
「手前味噌ですが心の優しい、よく出来た弟子たちが来てくれました。 弟子たちのお陰でこうしてやりたいことをさせてもらっております」 その言葉を聞いて父親が
「琴音」
「なに?」
「良い方に出会ったな」 そして正道の方を見て
「どうぞ気になさらないで下さい。 うちの家内も犬が好きですから喜んで面倒を見させてもらいます」
「あ・・・これは・・・どういたしましょうかな」 その時、仔犬を抱いてウロウロしていた母親の声がした。
「あら! 何処に行くの?」 降りたそうにしていた仔犬を下に置いた途端に走り出したのだ。
「お母さん捕まえて」 琴音が慌てて仔犬を追いかけた。 その様子を見ていた父親が
「家内も琴音もあんなのですがそれでも宜しければお預かりします」
「滅相も無い。 ・・・それではお言葉に甘えてお願いいたします」
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『みち』 ~道~ 第202回
「へぇー 結構立派に建ってるじゃないか。 なんだ、建物から始めてるのか?」
「建てかけてるって言ってたのに聞いてくれてなかったんだ。 だからまだまだなの」 正道の車から少し離れた所に停めた。
車から降りた父親が建物を見て回っている。 母親は山の方を見ている。 そこへプレハブのドアが開く音がした。 出てきたのは仔犬を抱いた正道だ。
「あら? 琴音さんじゃないですか」
「正道さん、車があったからもしかしたらと思いましたが やっぱり正道さんがいらっしゃってたんですね」
「はい。 明けましておめでとうございます。 今年も宜しくお願いします」 うっかり新年の挨拶を先にし損ねた琴音が慌てて
「あ、明けましておめでとうございます。 こちらこそ本年も宜しくご指導ください」 そう頭を下げて 次に正道の腕の中に居る仔犬の頭を撫でながら
「明けましておめでとう。 今年も元気に過ごそうね」 そう言って今度はまた正道を見直して
「正道さんはどうして今日は此処にいらっしゃったんですか?」
「実は仔犬を取りにきましてな」
「仔犬ちゃんをですか?」
「今日までは工事の方が自宅で見ていてくださったんですけど、急に田舎でご不幸があったから帰らなくちゃいけなくなったと早朝連絡がありましてな。 仔犬は連れて行けないでしょうから プレハブに連れてきておいて下さいと言っておいたんです」
「それじゃあ、今日からは?」
「私が連れて帰ってみようかと思ってるんですがね。 私が出かけている時に慣れない場所で大人しくしててくれますでしょうかね」 そう言って笑っている。
すると琴音の後ろから
「琴音、どなただ?」 建物を見て回っていた父親が琴音に声をかけてきた。
「あ、お父さん。 あの、正道さん私の父です」 その様子を見ていた母親も駆け寄ってきた。
「・・・と母です」
「おお、これはこれは。 琴音さんのご両親様でいらっしゃいますか。 何のご挨拶にもお伺いしませんで申し訳ありません。 琴音さんお願いできますか?」 抱いていた仔犬を琴音に預け
「初めまして、わたくし正道と申します。 この度は琴音さんのお力をお借りしてこのような事を始めようと思っております」 そして次に琴音を見て
「琴音さん、ご両親様にどんな事をするかの説明はされていますでしょうか?」
「はい。 漠然とですが。 でも・・・」 そこまで言うと何を言わんとしているのか察した正道が今度はまた両親の方を見て
「ご両親様にとってはどこの誰とも分からない私と大切な琴音さんが新しい事を始めるという事には不安でいらっしゃるかと思います。 また、世に聞き慣れないことを始めます。 ですが琴音さんのお力はとても素晴らしい物です。 その琴音さんのお力を待っている動物たちがいることをどうかご理解いただけないでしょうか」 暫く黙って正道をじっと見ていた父親が
「こちらこそ、こんな娘ですが宜しくお願いいたします」 深々と頭を下げた。 その姿を琴音が見て
「お父さん! いいの? 賛成してくれるの?」
「お前はまだ何も出来ないようだけどこの方にならついて行きなさい」 それを聞いていた正道が
「有難うございます」 頭を下げた。
「有難う お父さん」 抱いていた仔犬をぎゅっと抱きしめた。
「琴ちゃん その犬は?」 話が一段落した様子を見て母親が聞いた。
「あ、捨てられていたらしいんだけど ここでみんなで見てるの。 でも、ちょっと事情があって今日からは正道さんが連れて帰・・・」 ここまで言うと何を閃いたか
「ね、お母さん お正月休みの間だけでもうちでこの仔を見てもいい?」 琴音のその言葉を聞いて正道が慌てて
「琴音さんそれはご迷惑ですよ」 すると琴音に代わって母親が
「あら、いいですよ」 正道の方を見ては言っていない仔犬を見ながらだ。 そして続けて
「可愛いわねぇ。お名前はなんて言うのかなぁ?」
「笑っちゃうけど 仔犬ちゃんって言うのよ」
「仔犬ちゃん? お名前を笑っちゃ駄目よねー。 そう、仔犬ちゃんって言うのね。 今日は」 そういいながら母親が仔犬のほっぺを撫でて
「琴ちゃん、お母さんに抱っこさせて」 母親に仔犬を預けると
「正道さんまだお忙しいんですよね? うちなら父も母もずっと家に居ますし 私もあと何日か実家に居ますから。 今度・・・年明け最初こちらに来るときに私が連れてきます」 するとその会話に父親が割って入ってきた。
「ほぅ、お正月だというのに仕事ですか?」
「お恥ずかしながら 貧乏暇無しで年中無休です。 あっと、こんなことを言うと余計にご心配されますな」
「いや、いや。 そんな事はありません。 失礼ですがこの新しく始めようとされてる事でお忙しいんですか?」
「いえ、こちらの事はゆっくりと進めています。 今までしてきた・・・といいますか今もしておりますが 人様の体調を整えるほうの仕事が引っ切り無しでして 今の時代、皆さんストレスを抱えていらっしゃるようです」
「ほぅー。 そんな仕事をされているんですか。 体調を整えるですか・・・難しそうですね。 では、今後はこちらの方と二束の草鞋で?」
「こちらの方が進んでいきましたら今のところは弟子に任せます。 私はこちらの方に専念したいと思っていますので」
「お弟子さんがいらっしゃるんですか?」
「手前味噌ですが心の優しい、よく出来た弟子たちが来てくれました。 弟子たちのお陰でこうしてやりたいことをさせてもらっております」 その言葉を聞いて父親が
「琴音」
「なに?」
「良い方に出会ったな」 そして正道の方を見て
「どうぞ気になさらないで下さい。 うちの家内も犬が好きですから喜んで面倒を見させてもらいます」
「あ・・・これは・・・どういたしましょうかな」 その時、仔犬を抱いてウロウロしていた母親の声がした。
「あら! 何処に行くの?」 降りたそうにしていた仔犬を下に置いた途端に走り出したのだ。
「お母さん捕まえて」 琴音が慌てて仔犬を追いかけた。 その様子を見ていた父親が
「家内も琴音もあんなのですがそれでも宜しければお預かりします」
「滅相も無い。 ・・・それではお言葉に甘えてお願いいたします」